プレイングマネージャーの悩み、「4C's」と3つの鉄則で成果を最大化する仕事術
多忙なプレイングマネージャー必見!業務整理の「4C's」と、成果を出す人の「3つの鉄則」


これまで数々の企業の現場を見てきましたが、最近特に耳にするのが「プレイングマネージャー」の悩み。現場の最前線でプレイヤーとして汗を流しつつ、マネージャーとしてチームを率いる。言葉にするのは簡単ですが、その両立がいかに困難なことか。今回は、そんな八面六臂の活躍を求められるプレイングマネージャーたちが、いかにして成果を出すことができるかまとめました。
かつてはスタートアップ企業の専売特許のように語られたプレイングマネージャーですが、今や大企業とて他人事ではありません。働き方改革の名のもとに、メンバーの残業は減った。しかし、そのしわ寄せがどこに行くかと言えば…そう、管理職である課長クラスなのです。結果、期せずしてプレイングマネージャー化している、そんな声をあちこちで聞きます。
日々、山積みの業務に追われ、気づけば自分の時間は後回し。そんな悪循環に陥っていませんか? 安心してください。どんなに複雑に見える状況でも、整理し、効率化する「型」は存在します。
業務整理の切り札「4C’s」フレームワーク

まず、プレイングマネージャーが取り組むべきは、自身の抱える業務の棚卸しと整理です。ここで役立つのが「4C’s」というフレームワーク。これは「カット(Cut)」「コンバート(Convert)」「コンバイン(Combine)」「クリエイト(Create)」の頭文字を取ったもので、業務改革の打ち手を考える際に非常に有効なのです。(マインドセット株式会社代表取締役社長 李 英俊さん談)
- カット(Cut):大胆に「捨てる」勇気を持つ
「捨てる」というとネガティブに聞こえるかもしれませんが、これが最も即効性のある一手。例えば、定例化している会議。本当にその会議、毎週1時間必要ですか? 参加者全員が必須でしょうか? 目的が曖昧なまま惰性で続けているワンオンワンはありませんか? 「この会議は30分で終える」「この会議には私は参加しない」「このワンオンワンは隔週にする」など、思い切ってメスを入れる。完全にゼロにするだけでなく、時間短縮や参加者の絞り込みも立派な「カット」です。最初は抵抗があるかもしれませんが、数週間もすれば新しいスタンダードが生まれるはず。まずは「やめても大丈夫そうなもの」を洗い出すことから始めてみましょう。
- コンバート(Convert):「移管」で業務を最適配置する
次に考えるのが「コンバート」、つまり業務の移管です。あなたのチームでなくても遂行可能な業務、あるいは他部署や外部の専門業者に任せた方が効率的な業務はありませんか? 例えば、私が人事部長だった頃、急成長に伴い業務が逼迫していた労務部門の一部業務を、関連性の深い経理部門に移管した経験があります。チームメンバーのキャリアには影響がありましたが、組織全体で見たときの最適化を優先したのです。内製に固執せず、外部委託や他部署との連携を視野に入れることで、自身のコア業務に集中する時間を生み出せます。特に定型業務で、高度な専門性が必ずしも必要ないものは、積極的に「コンバート」を検討すべきでしょう。
- コンバイン(Combine):「統合」で無駄をなくす
複数の業務フローを一つにまとめたり、バッチ処理したりするのが「コンバイン」です。日常業務に追われていると、なかなか新しい組み合わせを発想しにくいものですが、ここにも効率化のヒントが隠されています。 採用業務を例に挙げましょう。面接後、エージェントに候補者一人ひとりのフィードバックをメールで送る…考えただけでも大変ですよね。しかも、現場の面接官からヒアリングし、それを分かりやすくまとめ直す手間もかかる。これを、例えば週に一度、面接官、人事担当、エージェントの三者で30分間のオンラインミーティングを設定し、まとめてフィードバックする形に変えればどうでしょう? テキスト化の手間も省け、認識のズレも防ぎやすくなるはずです。このように、個別に処理していたものを「コンバイン」することで、大幅な時間短縮が期待できます。 部下からの「ちょっといいですか?」という質問も、まずはチャットGPTのようなAIに尋ねるルールを設ける。それだけでも、質問の質が上がり、マネージャーが対応する時間を短縮できるかもしれません。これも一種の「コンバイン」と言えるでしょう。
- クリエイト(Create):未来のための「創造」に時間を使う
上記3つの「C」を駆使して時間を捻出できたら、いよいよ「クリエイト」です。新しい仕組み作りや、中長期的な戦略立案など、マネージャー本来の価値を発揮すべき業務に時間を投下します。現状の業務を全て抱えたままでは、この「クリエイト」の時間は永遠にやってきません。
成果を出すプレイングマネージャー、3つの鉄則
さて、業務整理のフレームワーク「4C’s」を理解した上で、多忙な中でも確実に成果を出し、周囲からも信頼されるプレイングマネージャーには、いくつかの共通する行動特性があります。
- 「安請け合い」はしない
上司から「これ、なんとかならないか?」と頼まれた時、つい「分かりました」と引き受けてしまっていませんか? 成果を出す人は、ここで一旦立ち止まります。その新しい仕事を引き受けることで、既存の業務にどのような影響が出るのか、優先順位はどう変わるのか、そして本当に今やるべきことなのかを冷静に判断します。「その業務を今月中に実施する場合、現在進行中の〇〇プロジェクトの納期に影響が出てしまいますが、それでも優先すべきでしょうか?」といった具合に、具体的なデメリットを提示し、時には勇気を持って断ることも必要です。
- 「すぐ着手」し、作業計画を「最初」に見積もる
特に未知の課題や新しいプロジェクトを任された場合、その作業ボリュームや難易度は、実際に手を動かしてみないと分からないことが多いものです。成果を出す人は、指示を受けたら可能な限り早い段階で、100%の集中力でその仕事に取り掛かり、初期段階での作業計画の見積もりを行います。 例えば、「新しいSaaS導入に向けて、3社のサービスを比較検討し、社長提案用の資料をまとめてほしい」といった指示。これを金曜日の締め切り間際に慌てて始めるようでは、質の高いアウトプットは期待できませんし、予期せぬトラブルで間に合わなくなるリスクも高まります。最初に手を付けることで、「この部分はAさんに協力を仰がないと難しい」「この情報収集には想定以上に時間がかかりそうだ」といった具体的な課題が見え、より現実的な計画を立てることができるのです。
- タスク管理の本質は「集中力」の管理と心得よ
多くのタスクを抱えるプレイングマネージャーにとって、タスク管理とは単に作業の順番を決めることではありません。それは「自分の集中力をいかに最適配分するか」というエネルギーマネジメントなのです。 頭が最も冴えている午前中の時間帯。このゴールデンタイムを、メール処理やルーティンワークで浪費していませんか? 新しい企画の立案や、複雑な問題解決といった、高い集中力を要する業務こそ、この時間帯に持ってくるべきです。例えば、「午前9時から12時までは集中タイムとして、誰からも話しかけられない環境を作る」「部下からの相談は午後2時から4時の間に受け付ける」といったように、意図的にスケジュールをブロックするのも有効な手段です。頻繁な「ちょっといいですか?」で集中が途切れるのを防ぐだけでも、生産性は大きく変わってくるはずです。
プレイングマネージャーが輝き続けるために
プレイングマネージャーの多くは、元々プレイヤーとしても優秀だった方が多いでしょう。だからこそ、メンバーがやるべき仕事まで自分で抱え込んでしまったり、管理職としてのコア業務が後回しになり、深夜残業や休日出勤でカバーしたりといった状況に陥りがちです。しかし、それでは心身ともに疲弊し、持続可能な働き方とは言えません。
まずは、今回ご紹介した「4C’s」のフレームワークを使って、自身の業務を徹底的に見直してみてください。そして、捻出した時間を活用し、成果を出すための3つの鉄則を意識して行動を変えてみる。最初は小さな一歩かもしれませんが、その積み重ねが、あなたを「罰ゲーム」のような管理職から解放し、より創造的で充実した働き方へと導いてくれるはずです。
この記事が、日々奮闘されているプレイングマネージャーの皆さんにとって、少しでもお役に立てれば幸いです。

Catai
PMOとして日々のプロジェクト運営に携わる中で、『もっと効率的に、もっと創造的に仕事ができないか』という想いから、生成AIの可能性に着目し、その活用法を個人的にも研究しています。