Google Geminiの新機能「Gems」活用術
Gemsを使えば、まるで優秀なアシスタントや専門家が隣にいるかのように、あなたの指示に合わせてGeminiが応答してくれるようになります。「なんだか難しそう…」と感じるかもしれませんが、ご安心ください。この記事を読めば、きっと「これ、ちょっとやってみよう!」と思っていただけるはずです。


Google AI「Gemini」の注目機能「Gems」とは? あなただけのカスタムAIで働き方が変わる可能性
GoogleのAI「Gemini」に、ユーザーが独自のAIアシスタントを作成できる「Gems」という機能が搭載されているのをご存知でしょうか。この機能を使えば、特定の性格や専門知識、話し方を持つ、まさに「自分専用」のAIを育て上げることができるのかもしれません。本記事では、この「Gems」の概要から具体的な作成方法、そしてビジネスシーンでの活用可能性について掘り下げていきましょう。

「Gems」とは何か? Geminiをパーソナライズする新機能
「Gems」は、一言で言えば、Geminiのチャット機能にユーザー独自のカスタマイズを施すことができる機能です。普段利用しているGeminiに対して、特定の役割や性格、得意分野、さらには応答のトーンまで細かく設定することで、オリジナルのAIアシスタントを作り出すことができるようになっています。
例えば、「歴史上の人物、織田信長のように厳しい口調でアドバイスをするAI」や、「常に冷静沈着でデータに基づいた分析を行うビジネスコンサルタント風AI」「内容の構成を整理してください。#1タイトル、#2抜粋文、#3本文」といった設定が可能になるのです。一度設定を保存すれば、常に一貫した設定のGeminiと対話ができるようになります。
さらに特筆すべきは、これらのカスタムAIを複数作成し、用途に応じて使い分けられる点です。「プロジェクト推進用の論理的なAI」「アイデア発想を促す柔軟なAI」「業界知識に特化した情報収集AI」「提案文書に長けたAI」など、業務内容や目的に合わせて最適なAIアシスタントを複数構築し、同時に動かすことが可能です。
「Gems」の作成は驚くほど簡単
この「Gems」の作成は、専門的な知識を必要とせず、誰でも直感的に行うことができるようです。現時点(本記事執筆時点)では、Webブラウザ版のGeminiからのみ作成可能ですが、作成したGemsの利用はスマートフォンのアプリ版からも可能となっています。
作成手順は以下の通りです。
- Geminiにアクセスし、「Gems」メニューへ:
WebブラウザでGeminiを開き、「Gemsを表示」といったメニューからGemsマネージャー画面に遷移します。
- 新規作成を開始
「Gemsを作成」ボタンをクリックすると、作成画面が表示されます。
- 名前と指示を設定
まず、作成するAIの名前を決定します。次に、「カスタム指示」の欄に、どのようなAIにしたいかの具体的な指示を入力します。例えば、「あなたは経験豊富なマーケティングアドバイザーです。ユーザーの相談に対し、具体的な成功事例を交えながら、戦略的なアドバイスを提供してください」といった具合です。
- Geminiによる指示の最適化(任意)
入力した指示が曖昧な場合でも、Gemini自身がその指示をより具体的で効果的なものに書き換えてくれる機能も備わっているようです。ペンのマークをクリックするだけで、目的やゴール、応答スタイルなどを詳細に設定した指示文案を提案してくれます。
- プレビューで動作確認
作成途中で、実際にどのように応答するかを試せるプレビュー機能があります。ここで想定通りの挙動をするか確認できるでしょう。
- 保存して完了
動作に問題がなければ保存し、カスタムAIの完成となります。
オプションとして、特定のファイル(知識ベース)をアップロードし、その情報を参照して応答するAIを作成することも可能です。実験的に過去の自分のメール文書(特定名は避けて)をPDF化して、構成や癖を学ばせてみると、ほとんど同じようなメール文章を書き上げてくれるようになりました。
ユニークなAIから実用的なAIまで
具体的なGemsの作成例を2つ紹介します。
例えば"もしも歴史上の偉人"がXXXをしたらという企画をたてる必要があるとします。
Gemへの入力は、「坂本龍馬としてユーザーの相談に回答するAI」です。カスタム指示に「坂本龍馬としてユーザーの相談に回答してください」と入力し、さらにGeminiの提案機能で指示を具体化。「坂本龍馬の思想、行動、歴史的意義に基づいてユーザーの質問に回答する」「ユーザーの相談に対し、坂本龍馬の視点からアドバイスを提供する」といった内容に調整します。
このあたりはPerplexity等で龍馬についてリサーチし、ドキュメント化して知識に追記すると精度があがると思います。
実際に「最近の生成AIについてどう思うか」と尋ねると、「わしは坂本龍馬じゃ。ふむ、ジェミニとか生成AIとか新しい言葉が色々出てきてちっとも分からんか。昔も新しいもんが出てくるたびに、みんなこりゃ一体何じゃと頭をひねったもんじゃきに、気に病むことはないぜよ」といった、見事にキャラクターになりきった回答が生成されます。
二つ目は、より実用的な「夕飯献立作成サポートAI」です。これは、「手元にある食材名を入力するので、その食材で作れるメニューを提案してください。さらにそのメニューの作り方をテキストとYouTube動画で案内してください」という指示で作成します。
うまくいかない場合は指示内容を「各献立の作り方を解説するYouTube動画をGemini上に表示して見れるようにします。@YouTube機能アプリを活用しても良いです」と修正してみましょう。
実際にやってみていただけると1つ目の指示から2つ目の指示に変更するとGeminiのチャット画面内でレシピ動画が再生できるよう改善されたのがわかると思います。
例えば「もやし、卵、豚肉」と入力すると、複数のメニュー案が提示され、その中から「豚肉と卵のもやし炒め」を選択すると、テキストのレシピと共に、参考となるYouTube動画が埋め込まれて表示されます。ユーザーは動画を再生しながら、調理手順を確認できるというわけです。
Gemを活用すると単に特定のキャラクターを演じさせるだけでなく、外部サービス(この場合はYouTube)と連携し、より具体的なソリューションを提供するAIを構築できる可能性が生まれます。
「Gems」の可能性と現状の留意点
「Gems」は、非エンジニアにとってAIとの対話体験を大きく変える可能性を秘めていると言えるでしょう。画一的な応答しか返ってこないAIではなく、自分の目的や好みに合わせて最適化されたAIパートナーを持てるようになる日も近いと感じます。
一方で、現状では指示の仕方によってAIの挙動が不安定になったり、期待した通りに機能しなかったりする場面も見受けられます。
重要なのは、ユーザー自身が指示を調整し、AIを「育てていく」感覚で改善できる点ではないでしょうか。試行錯誤を通じて、より精度の高い、自分にとって使いやすいAIへと進化させることができます。
Gemsをビジネスに活かすなら
Google Geminiの「Gems」機能は、単なるパーソナライズツールに留まらず、ビジネスにおける生産性向上や新たな価値創出の起爆剤となります。
まず考えられるのは、業務特化型AIアシスタントの内製化です。
例えば、特定の業界知識や社内規定に精通した「法務相談AI Gem」、あるいは「新人研修用OJTサポートGem」などを部署ごと、プロジェクトごとに作成できます。(Notebooklmとの使い分けを今後研究してみたいと思っています。)
これにより、従来は専門部署への問い合わせや膨大な資料検索に費やしていた時間を大幅に削減し、コア業務への集中を促すことができるようになるかもしれません。Gemsの「知識」ファイルアップロード機能を活用すれば、社内ドキュメントや過去の事例を学習させることで、より精度の高い専門的アドバイスを提供するAIの育成も可能になるはずです。
次に、顧客対応の質の向上とパーソナライズです。
企業のブランドイメージや製品特性に合わせたペルソナを持つ「カスタマーサポートGem」を設計し、一次対応を自動化しつつも、画一的ではない、より人間味のあるコミュニケーションを実現できる可能性があります。
特定の顧客セグメントに合わせた応答スタイルや情報提供を行うようGemsを複数用意すれば、顧客満足度の向上にも繋がるかもしれません。
さらに、チーム内コミュニケーションの活性化やアイデア創発支援も期待できるでしょう。
例えば、プロジェクトのブレインストーミングにおいて、あえて多様な視点を持つキャラクター(例えば、批判的な視点を持つGem、非常に楽観的な視点を持つGemなど)のGemsを参加させることで、議論の幅を広げ、新たな発想を促すといった使い方も面白いのではないでしょうか。
それか、Yes andといった方式で発散形式のワークショップを人が実施し、その結果をプロンプトとして論理派のGemを作成して整理することも面白いでしょう。
もちろん、導入にあたっては、AIの回答の正確性担保や、機密情報の取り扱いに関するガイドライン策定は不可欠です。
この「Gems」が示すのは、AIを単に使役するのではなく、目的に応じて「育てる」「チューニングする」という新しいAIとの関わり方ができます。トライ&エラーを許容し、現場のニーズに合わせてAIを進化させていくアジャイル的なアプローチが、Gemsをビジネスで最大限に活用する鍵となるでしょう。
この手軽さと奥深さをぜひお試しください!

Catai
PMOとして日々のプロジェクト運営に携わる中で、『もっと効率的に、もっと創造的に仕事ができないか』という想いから、生成AIの可能性に着目し、その活用法を個人的にも研究しています。