【生成AI】DeNAが実践する「AIファースト」な業務フローとは?
「AIにオールインする」と宣言したDeNA。その言葉通り、DeNAの現場では今、生成AIを業務に組み込む動きを急速に進めている。企画立案からリサーチ、デザイン制作、ソフトウェア開発、さらには日常の細かなタスクに至るまで、AIはもはや特別なツールではなく、日々の業務を支える「バディ」のような存在となりつつある。


本記事を書いたgoodLyft安田の生成AI活用状況
1人で1日1アプリ(土日)のMVP化で遊んでいます。DMM生成AI CAMPにも参加中。
・要件定義/仕様詳細化 ->Gemini2.5pro
・要件定義時の調査 ->Perplexity
・公開して良い範囲の共通仕様の作成->Gensparks
・Gemini x GensparksでVIVEコーディング
・(スマホ向け)bolt -> ExpoGoで使用感の確認
・(Webサービス向け)デスクトップアプリ化して使用感の確認
・セキュリティをあまり気にしないでメンバー間で公開して共有したいWebシステムの場合は、create.xyzを用いて作成、iframeにて外出ししてWordpressで展開 etc
DeNAが描く「AIと共に働く未来」
2023年、DeNAは「AIにオールインする」という力強いメッセージを発信し、全社を挙げてAIの活用を推進する方針を明確にした。この宣言は単なるスローガンではなく、DeNAのあらゆる事業領域、あらゆる職種の業務フローにAIを深く浸透させ、新たな価値創造と生産性の劇的な向上を目指すという強い意志の表れである。
本記事では、実際にDeNAの最前線で活躍する社員たちが、日々の業務の中でどのように生成AIを駆使し、従来のやり方をどのように変革しているのか、その具体的な「AI活用フロー」に焦点を当てて紹介する。彼らの言葉からは、AIを単なるツールとしてではなく、思考を深め、創造性を刺激し、煩雑な作業から解放してくれる「賢い相棒」として捉えている様子がうかがえる。
DeNAにおけるAI活用フローの3つの柱
DeNAの現場では、AIの特性を最大限に活かすため、業務プロセスを大きく3つのフェーズに分け、それぞれに適したAIツールや活用法を実践している。
- 情報収集・リサーチの革新:「知りたい」を瞬時に、深く
- アイデア創出・クリエイティブ制作の加速:「ひらめき」を形に
- 開発・業務プロセスの最適化:「効率」を極限まで
これらの柱を軸に、具体的なAI活用フローを見ていく。
1. 情報収集・リサーチの革新:AIによる多段階リサーチフロー

企画立案や意思決定に不可欠な情報収集。DeNAでは、AIを活用してこのプロセスを劇的に効率化・高度化している。
- ステップ1:初期リサーチ(概要把握)
- 活用AI例: Perplexity AIなど
- フロー: 知りたいテーマ(例:マッチングアプリの市場規模)について、AIに質問を投げかけることで、関連性の高い情報(ニュース記事、ブログなど)を迅速に収集し、概要を把握する。これにより、リサーチの初期段階での時間的コストを大幅に削減する。
- ステップ2:深掘りリサーチ(問題分解と多角的調査)
- 活用AI例: Grok (Xが無償提供)、GPTのディープリサーチ機能など
- フロー: 初期リサーチで得た情報をもとに、より専門的で深い情報を収集する。GrokのようなAIは、プロンプトに対して自ら問いを分解し、多角的に情報を探索する。GPTのディープリサーチ機能では、英語情報を含む広範な学術論文や専門記事へのアクセスも容易になる。
- ポイント: リサーチ対象の固有名詞(サービス名、技術名など)を明確に指示することで、AIの探索精度が向上する。
- ステップ3:ナレッジの集約と活用
- 活用AI例: NotebookLM、Obsidianなど
- フロー: 収集した情報をこれらのナレッジ管理ツールに集約する。Obsidianでは、数千単位の情報をローカル環境で関連付け、事業戦略立案時に過去の知識やアイデアをAIが瞬時に参照し、新たな洞察を得る手助けとなる。例えば、過去にインプットした経営戦略のフレームワーク(リチャード・ルメルトの「カーネル」など)を、現在の課題解決に活かすといった活用が可能だ。
- 応用:特定テーマの継続的リサーチ
- Grokを用いて「AIセーフティ」に関する有益な情報を発信している人物を特定し、その人物のニュースレターを購読するなど、特定分野の専門知識を継続的にアップデートしていくフローも実践されている。
2. アイデア創出・クリエイティブ制作の加速:AIとの共同作業
デザインやコンテンツ制作といったクリエイティブ領域でも、AIは強力なパートナーである。
- ステップ1:アイデアの可視化・ラフ制作
- 活用AI例: ChatGPT (画像生成機能)、Midjourneyなど
- フロー:
- イメージ共有: 会議などで「こんなイメージのデザインにしたい」という抽象的なアイデアを、その場で画像生成AIに入力し、具体的なビジュアルとして共有する。認識の齟齬を減らし、議論を活性化させる。
- バリエーション展開: 同じキャラクターやモチーフでも、異なる世界観やトーン&マナーのイラストをAIに複数生成させ、最適な方向性を見つけ出す。従来、参考画像を探すのに費やしていた時間が大幅に短縮される。
- UIデザインへの応用: サービスのブランドイメージを言語でAIに伝え、UIパーツやキービジュアルのラフ案を複数生成させる。配色やスタイルの調整もAIとの対話を通じて行い、わずか数ステップで高品質なラフデザインを完成させる。
- ステップ2:ペルソナ作成支援
- 活用AI例: 各種画像生成AI
- フロー: ターゲットユーザーのペルソナを作成する際、その人物像をより具体的にイメージするために、AIに顔写真を生成させる。複数のバリエーションの中から、最もイメージに近いものを選び、チーム内での共通認識を深める。
3. 開発・業務プロセスの最適化:AIによる自動化と品質向上
ソフトウェア開発の現場では、AIによるコーディング支援が目覚ましい効果を上げている。
- ステップ1:コーディング支援と自動生成
- 活用AI例: Cursor、GitHub Copilot、など
- フロー:
- サーバー構築の効率化: エンジニアがAIエージェントに指示を出すことで、サーバー構築に必要なコードの大部分(動画内では80%以上)を自動生成する。これにより、従来2人で1ヶ月かかっていた作業が2週間で完了するなど、3〜4倍の効率化を実現している。
- コードの読解・編集・テスト支援: AIが既存コードを理解し、修正案を提案したり、テストコードを生成したりすることで、開発者の負担を軽減する。
- ステップ2:並列作業による生産性最大化
- フロー: Cursorのブランチ機能などを応用し、一人のエンジニアが複数のAIエージェントを同時に稼働させ、それぞれに異なるタスクを並行して処理させる。これにより、実質的に数人分の作業を一人でこなすことが可能になり、開発スピードを飛躍的に向上させている。
- ステップ3:コード品質の担保と技術的負債の抑制
- フロー: AIを活用することで、開発の初期段階から整理された、いわゆる「綺麗なコード」を記述することが容易になる。これにより、将来的なメンテナンスコストの低減や、AI自身がコードを理解しやすくなるという好循環が生まれる。AIがアーキテクチャ設計の指針を示すこともある。
- その他:日常業務の自動化
- 活用AI例: Claude (MCP機能) など
- フロー: 「ダウンロードフォルダにある特定のPDFファイルを、デスクトップに指定した名前でコピーして」といった日常的なファイル操作を、自然言語でAIに指示して自動化する。FigmaやGitHubといった外部サービスとの連携も進められており、煩雑な手作業から解放され、より本質的な業務に集中できる環境を構築している。
DeNAが目指すAIとの協調体制:AIは「バディ」

DeNAでは、AIを単なる効率化ツールとしてだけでなく、社員一人ひとりの能力を拡張し、新たな創造性を引き出す「バディ(相棒)」として捉えている。
- 意識改革: 「この作業はAIの方が得意かもしれない」とまず考える文化を醸成する。
- ナレッジ共有: AIの活用方法や成功事例を社内で積極的に共有し、組織全体のAIリテラシーを高めている。
- 未来志向の開発: 現在のAI技術の限界を認識しつつも、その一歩、二歩先の進化を見据え、グローバルで通用するプロダクトやサービス開発に挑戦し続けている。
AIと共に進化し続けるDeNA
DeNAにおけるAI活用は、まだ始まったばかり。しかし、この取り組みは既に、業務のあり方を根本から変え、社員の働き方に新たな可能性をもたらしているようだ。リサーチ、クリエイティブ、開発といった各領域でAIとの連携を深めることで、DeNAはこれからも革新的なサービスを生み出し、社会に新たな価値を提供し続けていくだろう。

Catai
PMOとして日々のプロジェクト運営に携わる中で、『もっと効率的に、もっと創造的に仕事ができないか』という想いから、生成AIの可能性に着目し、その活用法を個人的にも研究しています。